「オレの小樽でGR 」勝手に続編。
そもそも何故に夜の小樽に惹かれたのかと言うと、小樽に限らず観光地として名を馳せている街というのは得てして夜は寂しい。観光客は翌日の観光の為にホテルで夕食を楽しんで寛ぐ。ススキノのように夜の歓楽街として深夜まで楽しめる賑やかな場所でもあれば話は別だが、小樽のようにメインが昼という観光地は少なくない。そのような街の夜は昼の喧騒とは裏腹に、ひっそりと佇む別な街の顔を垣間見ることが出来る。そこには刹那的な人生の生活臭が漂い、実に哀愁で満ち溢れていることが多い。
そこが良い。
時刻は18時。
まだ観光地には灯りが灯っているが、半数以上の店が慌ただしく店仕舞いをしている。この早期閉店作業を実施している街は「裏寂れ率」が非常に高い。
いつの時代も高台の上に建つのは豪華絢爛な建物。
札幌軟石には瓦の屋根が似合う。
あぁこのノスタルジックな古びた昭和感がたまらない…
軽自動車1台通るのも難しいような狭い路地が、迷路のようにクネクネと続いている。
この提灯屋台村には「レトロ感」を売りにした今風の店が並んでいたが、この裏寂れた街並みに違和感無く溶け込んでいて中々良かった。
実に魅力的な店が沢山あるというのに、全ては撮りきれていない。何故なら平日の夜とあって7割近くの店がそもそも開いていない。
これは誤算だった。
当て所なくぶらぶらと彷徨い歩いていると、偶然にも探し求めていた店に遭遇する。一旦通り過ぎてから「な、なんだ今の店は」と慌ててそのまま後ろ歩きで戻ってしまった。
その名も「喫茶 コロンビア」。
レースのカーテン越しに店内を覗くと、真っ赤な別珍のソファと豪奢なシャンデリアが目に飛び込んできた。
おぉ〜…す、素敵…
これは入るしかない。
恐る恐る入ると蝶ネクタイの若い男性スタッフがお出迎え。ちょ、蝶ネクタイ…ポイント高過ぎ。
店内撮影禁止の店は小樽も少なくない。一応店内撮影の可否を問うと拍子抜けするほどあっさり快諾。これもポイント高し。
船の模型といいフランス人形(?)の陶器といい、確実にポイントを稼ぐ喫茶コロンビア。
いやはやそれにしてもここまで絵に描いたような昭和の喫茶があるとは…。しかも間近で見るとシャンデリアの迫力凄過ぎる。
特筆すべきは別珍のソファ。なんとどの席も擦り減っていない。しかも座ると腰が床にめり込むのではないかと焦るほどふかふか。
是非ともパンチパーマのピコ太郎氏に座っていただき、新聞広げてモーニングセットなんぞを食べてもらいたい。ペンパイナポー。
黒いワンピースを着た若い女性スタッフに「ブレンドコーヒーひとつ」と言うと、厨房らしきところに向かって小さなカウンター越しに「ホットひとつ」と言うのが聞こえた。この「ホット」という代名詞を使うのも高ポイント。
そして不思議なことに、昭和の時代にはよく見受けられた大理石版のテーブル、砂糖入れ、コーヒーカップあるいは床のカーペットなど、どれをとってもこの手の店にはありがちな「時代を経た」ような使い込んだ形跡が全くなく、清潔感さえ漂う雰囲気に驚きを隠せなかった。
因みにブレンドコーヒー420円也。
個人的にここは再訪率が非常に高いので、今度来たらクリームメロンソーダとナポリタンを注文してみよう。
小樽観光に来たら是非オススメです。
かくして時代錯誤な名店喫茶コロンビアを後にする。すっかり夜も更けて…と言いたいとこだがまだ19時。
この推定時刻深夜2時半的閑散具合がたまらない。
「わか松」というスナックの前で、年老いた和服姿のママが千鳥足でタクシーに乗り込む客を見送っていた。
人通りの少ない路地でやっとそれらしい光景に出逢えてホッとした。
いい街だな。
この企画はシリーズ化決定。
次回乞うご期待。
さ、帰ろ。
あばよ、小樽。